日記

朝ドラ「カムカムエヴリバディ」が佳境を迎えている。

初代ヒロインの安子(3代目ヒロインひなたの祖母)の、半ば失踪ともいえる渡米に関する謎に迫りつつある(はず)なのだ。盛り上がらざるを得ない。

そちらももちろん楽しく(?)見ているのだけど(しかもネタバレサイトまで行って)、ひなたが祖母の結婚写真を見るあたりでちょっと別の話でしみじみしてしまった。確かに写真に写る人々はひなたの血縁の者なのだけど、今のひなたにとっては見知らぬ人だらけで、かろうじておじの勇だけに反応する。安子が家族に囲まれてどんなふうに暮らしていたか、祖母の祖父母が和菓子屋をどんなふうに営んでいたか、ひなたはもちろん、母(2代目ヒロイン)のるいも知らない。そんな感じで忘れられていることが無数にあって、当時を知る人たちも断片でしか語れない。視聴者だけが知っている。

たまたま(???)安子、るい、ひなたの物語はドラマとして見ているけど、当事者の立場からしたらわからないことだらけだ。

ちょっと話が飛んで、私の両親が離婚をするのかしないのかもうわからないくらい泥沼の電話での言い争い(既にこの時点で、私は直接聞いてはおらず、母親による伝聞である)が繰り広げられていた頃、母親がぽろっと「あんたが昔やっていたことを全部娘(私)にばらす」という脅し文句を父親に言い、それはやめてくれと止められたのだ、という話を私にしたことがある。

なんだよそれ怖いよ。

青森の田舎の、今でいうヤンキーっぽい立ち位置だったらしく、仲間とつるんでなんか悪さをしてたらしいというのは親戚のあれやこれやの伝聞で聞いていた。実際に「やったこと」は知らない。でも娘に知られたくないことって、もはや犯罪レベルではないか。悪い想像は膨らむ。

聞いてもどちらも答えないだろうし、私も毎日疲れていたので、深追いはしなかった。父母の「夫婦」としての側面はもうそちらでなんとかしてくれ、私は関わりたくない、そんな感じで暮らしていた。当時は。

そしてその悪事は、父親が世を去った今、母親しかおそらく知らず、母親は何も語らずに墓まで持っていくのだろう。たった1親等でさえこんな感じなのだから、生まれる前に亡くなった父方の祖父母の話はもう永遠にわからないし、長く縁が切れたままの父方のおじ・おばの現況なと知る由もない。戸籍をたどってなんとか現住所を知ることができるくらいか。

無数の「忘れられたエピソード」がひとりずつにあることを考えるとなんとも言えない不思議な寂寥感がある。すべてが伝聞で、何も証明されることのない小話たち。

そして私には子がなく、私の無数のエピソードもあと何十年かしたら消え去ってしまう。むなしさはないけど、きっと「世に何かを残したい」と考える人はこういう気持ちなんだろうか、なんて想像してしまう。

100年の物語を描いて、100年前のことが全くわからないという現実を見せてくれているカムカムエヴリバディ。最近は本当に毎日しみじみしている。