身にしみるやさしさと身にしみないやさしさ

夫の会社に親会社から出向したタイミングで10年ほど前にお世話になった人が亡くなり、告別式に列席。夫の会社関係も親会社関係もいるので「昔見たことあるえらい人だ」から「おっ、だいぶおっさんになったな!(同世代のちょい先輩)」までいろいろ見かけた。昔の上司からは「何のつながりがあったんだっけ」と聞かれて「夫がいろいろ」と答えたけど、あなたその時夫の直上司だったから!ざんねん!という気持ちで受け流した。ほんとだめなおっさんはだめだ……。

亡くなった方は仕事で厳しい方だったそうだけど人望厚く、遺族は当初家族葬を望まれていたそうだけど弔問客がめちゃくちゃ多くなって通夜・告別式をやることになったのだそうだ。リタイア寸前に病が発覚したけど、パワフルに国内外へ旅行に行き、臥せってからも周囲への気遣いを欠かさなかったという(喪主挨拶より)。私がその方と関わったのは夫の会社に在籍していた頃から通算してほんの数日程度だったけど、本当に救われた。世間が敵ばかりになったと思っていた時に、東京からやってきてくれてテーブルをはさんで差し向かいになった時のことを今も忘れてはいない。

たまたまお通夜に行けないタイミングだったから告別式に行って、たまたま棺の中のお顔を見る機会を持たせてもらい、小さくなっちゃったなぁ、と思った。67歳。若いなー。当のご本人にしてみれば私のことはあんまり覚えていない間柄だっただろうけど(自己紹介すれば思い出す、くらい)、人生のある一瞬で支えになってくれた人、というのは忘れ難い。本当に一瞬でも。

ちょうど、何の感慨も湧かない、形だけの手紙が届いていて、その対応を考えていたところでの訃報だった。私にとっては両極端の事例である。人の心を動かせる人と、人の心を頑なにする人と、もちろん受け取り手である私の解釈次第ではあるけど、こんなにも違うものなのか、とぼーっと考えている。もしかしたら亡くなった人にだっていろいろあったかもしれないのに。