今週のお題「僕の住む街・私の地元」
大阪に住んでいたころ、夫の親戚と宴席を囲んだ。夫の親戚はだいたい関西に住んでいて、私のことは「よくわからないけど関東からやってきた」くらいの認識だったと思う。初めて会う人もいて、名前もあんまり分かってなくて、「この人は○○さんの弟」「この人は○○さんの息子さん」のような属性でなんとか会話をしていた。まあよくある話だ。
「toyaさん(仮名)はどこのご出身ですか?」「あ、神奈川県出身なんです」「あーだから関西弁じゃないんだ」
この会話が納まったかのように思えたその時。
「神奈川のどの辺?仕事で行くから知ってるんだ」
「鎌倉市、です」
「鎌倉!?!?!?」「いやーあの子お嬢さんもらっちゃったのでは」「大阪に引っ越して大変だったでしょう」
この会話を、大阪に限らず何度繰り返したことか。予想された反応ではあった。だから「神奈川県」で納めたかった。まさかそこから先に突っ込んでくる人がいるとは思わなかった……。
……という前振りで鎌倉「市」に住み続ける理由です。鎌倉に住んでるからってみんなが寺社歩き回るわけじゃないし、鎌倉野菜食べてるわけじゃないし、おしゃれな海辺のお店で何か食べるわけじゃないし、サーフィンみたいなマリンスポーツやるわけじゃないし、金持ちじゃないんです!
鎌倉市には1歳から30歳くらいまで住んだ。鎌倉市立の小中学校に通って、高校はお隣の市で、大学は主に東京だったけど自宅から通い、社会人になってからもまるで忍者が麻を飛び越えるがごとく東京に通った。私が考える鎌倉市は、ざっくり
で成り立っている。私は湘南モノレール沿線住民だった。モノレールはまあまあ有名ではあるが、神奈川県南部を離れると知られている割合は体感で30%くらいになる。「観光で乗ったことある」「ああ名前は知ってる」「鉄ヲタなので当然知ってる」などで、あとは「???(´・_・`)???」という感じ。ちょっとでも知っている人に対しては、「JR大船駅とあの有名な江ノ島をつなぐ線なんですけど、だいたいあの真ん中」という言い方をして、だいたい理解されず、「鎌倉出身である」とだけ記憶される。大変遺憾である。その中には「お嬢さんである」というのがまあまあの割合で含まれるからだ。その場合は「大仏がある方と漁村の方があって、漁村の方」という。または「義経が腰越状書いたところ」ともいう。どっちも「???」である。しょうがない。
しかし鎌倉には確かにお嬢様が生息している。やはり金持ちが多いところではあるのだ。しかしそのイメージだけで語られるのは大変遺憾である。横浜出身の人がみなとみらいをイメージされて「いや栄区なんだけど」というようなものである(わかりづらい)。
この誤解を生じやすい「鎌倉市」の出身であることについて、多少屈折した思いはある。でも、長く住んだなら住んだなりに、やっぱり気に入っているところがある。今は実家を離れ、東京に住んでいるけれど、たまーに行くとえもいわれぬ懐かしさを感じる。老後にもし条件が合うところがあれば住むのも悪くないなーなどとうっかり考える。坂が多いのに。
では本題です。
1.東京からほどよく離れている
もう鎌倉を離れてしまっていますが、かつてAppBankが鎌倉に本拠地を構える理由を書いていました。
・都心からの適度な距離(近すぎず遠すぎず)
・都内へ電車一本、しかも渋谷、新宿、品川、新橋などに各々一時間以内
実際はいうほどほどよくはなく、東京で飲み会があるたびに帰りの湘南新宿ラインの時間を気にしたり、新橋発の東海道線の時間を覚えたり、どうしてもだめなら最後の手段京浜東北線!を使ったりして、時間がかかることはかかるのですが、とりあえず最終さえ乗ればなんとか帰れます。気が進まない飲み会のときは「すみません(モノレールの)終電が早いので」(事実です)といって帰ります。仕事で遅くなったらタクシー、とかあったけど。
帰りの電車の中での睡魔とは何度も戦いました。絶対に寝たらだめだーと思いながら気がつくと大磯駅だったことがあります。もちろん上りの終電は終わっており、タクシーで大枚はたいて帰りました。あーあ。
2.海と山がほどよくある
ほどよく、というのがポイントで、海!山!バーベキュー!みたいな感じではないです(そういう方もいるかもしれませんごめんなさい)。
私が住んでいたところから海まで、だいたいなんとなく歩いて20分くらいでした。私はこの距離を「遠い」と思っていたのですが、どうも世間では「歩いていけること自体が近い」という認識らしい。小さい頃はよく親に連れられて海岸まで歩いて、たこ揚げしたり、砂で山を作ったりして遊びました。今よりももっとずっと海が汚い昔の話。
鎌倉山が近くにあった(というより学区の一部だった)ので、ちょっと友達の家に行くとすぐ山だったし、ちょっと遠足やら野外学習やらあると山だし、遠足が天園ハイキングコース(割と山)だし、高い山じゃないけどいつでもどこでも山という感じではありました。山奥過ぎて下山するのが大変、という感じの家はあんまりなかったように思います。国道134号線沿いのやたら高台にある家はどうやって暮らしてるのかわからないのですが……海からやってくる塩が大変そうすぎる。
自然だらけではなくてそこそこ江ノ電が走ってたりそこそこ商店街があったりそこそこスーパーがあったりするので、こういうもんかなーと思ってましたが、うまく混ざってる感じの街は案外少ないんですね。私はその後大阪市内に住むようになって、見渡す限り山がない風景にびっくりしました。遠くにいかないとないのです。
3.割と買い物に困らない
ちょっと電車に乗れば横浜駅に出られるし、帰りとは逆でちょっと長く電車に揺られれば東京に行けるし、たぶん大都市での買い物にそんなに困らないんじゃないかなーと思います。思います、というのは、かつてお隣の市にある藤沢駅周辺に割といろいろなデパートがあって、だいたい藤沢で済んでしまったからです。今はデパートがなくなってビックカメラになったりしてますが。
雑誌に載ってるものがほしいとか、ちょっと気に入ったいいものを買いたいとか、そういうときにはきっと物足りないんじゃないかという気はします。ファッションに凝りたいときも、もしかしたらやや苦しいかもしれません。
がんばって3つ作ってみたものの
私にとっての鎌倉のいいところは、もうちょっとピンポイントで、京急バスに乗って鎌倉山を通るときに見る桜とか、鎌倉高校前にある坂(日坂といいます)を原付で降りていくと見える海とか、モノレールに乗っていてカーブを過ぎるときにかかる遠心力とか、ものすごく些細な風景の方が刺さってくる感じがします。が、あまり一般化できなくて、単純に「好きな風景」みたいになってしまって、いやそうじゃなくて鎌倉じゃないと見たり感じたりできないもので!というのをうまく文章で説明できないので、この辺で終わろうと思います。観光ナイズされすぎないでほしい気はするけど無理だろうなー。
歴史的にも割と楽しい街だと思います。
(2010年ゴールデンウィークに鎌倉に里帰りしたときの写真。初めて「GWの鎌倉」を体験してもう二度と行くまいと思った)