朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」が昨日終わった。
心に残る名作とまでは言いづらいけど、でかいチャレンジをして成功させたなー、という印象だった。面白かった。
まとまった感想文を書くと壮大になりそうだし、全話きっちり見たかというとぽろぽろ抜けがあるので、気ままに小見出しをつけてだらだら書くスタイルで感想を書く。登場人物については特に解説を入れたりしないでがんがんいく。
3代のヒロインについて
安子編
相対的には放送が短かったにもかかわらず、インパクトが強くて、安子編を見たから完走したといってもよい。
100年の物語のスタートだからか、あんこ、ラジオ、英語、野球などのモチーフの説明が丁寧。そして稔と安子の出会いと交流と結婚、出征、稔戦死後の安子とるいの暮らしまでぎゅっぎゅっと詰め込みまくり、テンポが早くてとても楽しかった。さらに戦中戦後の安子周辺の人々が次々と亡くなり、安子がじわじわと追い込まれていくところは、楽しいわけではないけど毎回スリリングだったので、当初の触れ込みだった「ハートフルコメディ」はどこへやら、スリルとサスペンスとドキュメンタリーといった感じで15分がとても短かった。ていうかハートフルコメディは結局なんだったの……。
大きな衝撃の言葉「I hate you」で結末を迎える週は本当に見るのが大変だった。安子の考える生活の破綻があんなにドラマチックに起こるとは。子供を捨てる形で婚家である雉真家を出ることになった安子に対し、「どんな形であれよくない」と非難する内容のtweetをちらほら見てきたけど、そりゃあれだけダメージくらったら「I hate you」でライフゲージゼロになるやろ……と私は安子に同情するスタンスだった。しかし、これが後ほど仇になる。
るい編
さすがに17歳から深津絵里さんが演じるには無理がある、と思った川辺での勇とのキャッチボールシーン。いや、演技はティーンなんだけど、それにしては私は深津絵里さんを見すぎていて、違和感がすごかった。また、予告でるいは「英語と母親を憎んで育つ」と言っていたので「安子編に引き続いてどれだけ凄惨になるのだ」と身構えていたら、ミュージカルありほのぼのありだったので少しずっこけた。
正直「憎む」という感情はあんまり読み取れなくて、ジョーがサニーサイドを演奏した時に突然店から飛び出していくくらいでは?と思っていた。どちらかというと「あきらめ」「不信」の方が合うような。
るいの世界が広がってジョー、トミー、ベリーとの交流が描かれるところはなんだか長くて個人的には中だるみを感じたけど、大事な友人になった後のトランペットのエピソードからの海での抱擁、トミー・ベリーの懐の深さ、などが描かれないとひなた編が成立しないどころか大月家ごと成立しなかったので、しょうがない。
そういえばるいはこの時期ワンピース姿の印象が強かったけど、年齢が上がるにつれて(経済事情もあったとはいえ)カジュアルに変わっていってたな。
ラジオの影が薄いし英語とも縁がないし、せっかくの「クリーニング店勤務」がその後のるいにあんまり影響を与えてなさそうなのが惜しかったけど、トータルで見ればめでたい感じでひなた編へなだらかにバトンタッチ。予告されていたキーワード「ジャズで道を切り開く」の登場はここではなかったことが後にわかる。
ひなた編
Twitterのハッシュタグ方面でもさんざん指摘されていたけど、深津絵里さんにあまりにもフォーカスしたストーリーなので、相対的にひなたのヒロイン感が薄かったのが残念なところたった。川栄李奈さんキュートでよかったのに、最初は「何も続かない平凡な女の子」だったからしょうがないよね……。子役時代が長いな!!と思ってしまったのも残念ポイントだけど、一恵・小夜子(と吉之丞)のキャラを立てないとストーリーが成立しないのでしょうがない(2回目)。
安子・稔、るい・ジョーの中でちらほら見え隠れしていた「時代劇」がここでクローズアップされる。無理矢理では?と最初は思っていたけど、虚無蔵さんやら榊原さんやら、劇中のスーパーヒーロー・モモケンやらの魅力で、そのうち気にならなくなった。
モモケンが回転焼き屋「大月」に来た日に生まれたから弟が「桃太郎」と命名されたのはかわいそうに思った(し、本人も姉とのけんかで口にしていた)が、これまた最終回につながっていくので大変である。
いろいろあって突如登場した謎の人物・アニーを巡って話が大きく展開していく。……というかアニーの存在感がでかすぎる。ひなた編なのに!実質!アニー編!!
視聴者には「アニー=安子」のヒントを出しまくっていたのに決定打にはならないもんだから、アニーのエピソードの量が多くて、これだったら先に視聴者にはアニーの正体をばらしておいて、作中の人物がどうなるかにフォーカスしてもらう方がよくないですか???と提案したい。今からでも。ひなたも英語勉強したり、実は17年もの長きにわたってるいがラジオで英語講座を聞いていることがわかったりして、英語とラジオの話はなんとか続いている。「たちばなのあんこ」はつながっていないけど「あんこ」は引き続きキーワードとして存在。ていうか(今回この言葉多い)「あんこ」が「餡」だけじゃないヒントになってたってことだよね???勇から「あんこ」とからかわれていて安子も嫌がってたのになんでわざわざアニー?ということは変わらず主張していきたい所存。だって勇から意に染まぬプロポーズ受けて気まずくなってたやん!!!
ひなたは一応メインヒロインだけど実質るいと安子の和解がメインになるので、ひなたちゃんは恋に仕事に大忙し風に見せかけてるけど、ノストラダムスの大予言とか当時の流行歌とかがぶちこまれて、なんとなくヒロインとしてのまとまりがない感じで、最終回で突然ヒロインっぽくなるのでぽかーんであった。
めっちゃすごかった、の巻
最終回の怒涛の伏線回収っぷり
「伏線回収」という言葉はあんまり無駄打ちしたくない言葉だけど、そう言わざるを得ない。
桃太郎がキジ(雉真繊維のユニフォーム)、サル(おさるのジョージ)、イヌ(息子の名前「剣」から連想)を従えて甲子園に行く、というしょうもないネタ(失礼)のために、桃太郎は「剣太郎」にはならなかったのだね……と寂しく思った。桃ちゃん格好良かったけど。勇ちゃんも喜んだだろうけど。
ひなたの初恋の相手であるビリーがラジオ英会話講座でのパートナー・ウィリアムだった、というのは予想の範囲内で「おおーロングパス来た」と歓迎。最後の最後でしか描かれなかったのは惜しいけどラストシーンとしてはいいなぁと感じた。
ハッシュタグ勢がみんな気にしてたきぬちゃんと「たちばな」の謎はきれいに解けてよかった。でももう少し手前でばらしてくれてもいいのよ……?桃ちゃんと花菜ちゃん(きぬちゃんの孫)の暮らしとかに尺使ってくれても……。
夫の田中については何もいうまい。全編通して田中はこのドラマにいたのだ。
トミー最高だよトミー
最初はいけすかんやつやなー、という印象だったトミーがひなた編で大活躍。演じた早乙女太一さんもすごかった。若い時は若者だったし年取ったらちゃんと重鎮感あった。
まず大月家里帰り中、京都の自宅ではなく帰省先の岡山の喫茶店に、世界的トランペッターであるトミーを軽々呼び出すジョー。親友なのはいいけど頼み事あるならジョーが出向くのが筋では……と思ってしまうが、ジョーの強火担であるトミーはひょいとやってきてしまう。さすがジョーがトランペット吹けなくなった時の異変をるいより早く察して本当のことを聞き出したトミーである。
ブランクを経てピアニストとしてトミーのバンドに加わることを快諾するのもすごい。それまでピアノ担当いなくて(いないよね?)よかったねジョー。そしてジョーにピアノの基礎があることを確認してからのピアノ講師手配。バンドが岡山でのクリスマスジャズフェスティバルへの出演するのをさらっとOK出しちゃう。世界のトミーをこき使いすぎでは?大月夫妻の荷物まで持ってくれるし……。アニーのラジオ放送を聞いて事情はわからないながらも冷静に対応する(ここ桃ちゃんもよかった)トミー、るいがステージて固まってしまった時にもすっと演奏でカバーするトミー、いや本当にトミー素晴らしいよ……。
納得いかん、の巻
アニー・ヒラカワ=安子・ローズウッド
ぎりぎりまでアニーは安子じゃないよ派だった私。だって匂わせるにしてもほどがある不自然さ!!!!渡米後、仕事で初めて日本の土を踏むことになったとは思えないしぐさあれこれ。あんこのおまじないを英語で語るひなたを置いて逃げ出すアニー。そりゃ安子だからかもしれないが、だったらひなたの名前についても狼狽するのでは?
最終的にアニーを名乗る安子であったことが本人の口から(安子だ、とは言ってない)ラジオで聞かされたシーン、深津絵里さんの表情だけの演技は本当に素晴らしかったけど、ラジオで娘の名前言うのはわかるが「おいしゅうなれ」はどうだろう……など頭に雑音がある状態になってしまった。深津絵里さんはすごかった。
私は安子編での、上白石萌音さんが演じる安子に、アメリカでは幸せになってほしかったんだよ……ロバートと微笑み合う安子、きれいだったけど、そこから映画や演劇の勉強を始めるところもちょっとは描いてくれよ……アニーの快活さとの温度差で風邪引くよ……。
アニーの岡山爆走問題
あさイチで、安子が走った距離が5kmくらいだということが視聴者によって検証された。
後で制作側から「稔の戦死を聞かされた時に走ったルートをなぞった」ことが明かされたけど、そうならそうで回想で走ってるシーンをかぶせるとか、いろいろあるだろうやり方が(困惑)。
ついでに、「安子には逃げ癖がある」「さすが算太ときょうだい」など言われていたけど、確かに思いつきで行動する節はあったものの、安子は安子なりに目の前の問題にぶつかっていってただけだと思っているので、その論にもちょっと納得いっていない。
全てはアニーの演出過多のつじつま合わせになってしまったせいだと思うんだけど、ひなたから声かけられてとっさに逃げるのは、油断していたらいかにもありそうなので、爆走さえしなければよかったのではないか。安子とオーバーラップする心象風景にしてもちょっと爆走が過ぎる。ひなたお疲れ様……。