ある服売り場での出来事

先日ユニクロにふらりと入りまして。心斎橋にはH&Mもできたんですがまだまだものすごい混雑で入ろうという気がおきず、なんとなくぶらりと洋服を見るのはいつもユニクロです。求めるものがあるというよりはかるーく流して見ていたのですが、目に留まるのは黒かグレーの、一色の服。ちょっとデザインが凝ってたりすると途端に怖気づきます。フロアを変えても同じ。もちろんユニクロですから、いろいろな色の展開があるにも関わらず、黒もしくはグレーの服しか視界に入らないのです。あーこれはあんまり服を選ぶには向かない状態なんだな、と判断してその場を去りました。

小学生の頃から暗い色を好み、柄物を避けまくる娘に、母親は「もう少し華やかな服も似合うのに」「鮮やかな色が似合うよ」などなど励まし?の言葉をかけてくれたり、友人知人は「もっと胸の開いた服を着たほうが」とアドバイスをくれたりと、周囲の働きかけもあるにはあるのですが、なんかあれですよ、身体がでかいのでシンプルな服の方がいいかなっていう思い込みですよ。やせてみえるし。

そんなこんなで自らの好みと売られている服のギャップに困りながら日々過ごしております。が。

日用品などを買うお店のひとつに、卸の「萬栄」というのがありまして。衣料品も安く買えるので(質はそれなり……のような気がする)、頼まれ物とかまとめ買いするものなんかはたまに利用します。ある日私がレジに行っている間に、旦那はベンチに座って待っていたのですが、同じようにベンチに座っていたおじさまのそばにおばさまがやってきて「こういうのどうかしら。いつも地味だから派手なのがいいと思ったんだけど」と選んだ服を見せたそうなんですね。おじさまはいいともよくないとも言わず(たまたまかもしれない)、その間に私が戻ってきたので席を立ったのですが。

旦那曰く、そのおばさまが持ってきたのは全く派手とは縁のない濃い目のワインレッドのセーターで、何しろ安いので「シックで上品」みたいなものではない、本当に普通の、分類すれば地味なセーター。その時身に着けていたのは、黒のセーター。全体的に非常に地味で、顔立ちは「昔そこそこ美人だったんだろうな」(旦那談)という雰囲気なのになんだかもったいない印象だったと。そして旦那さんらしきおじさまはアドバイスをするでもなく、特に反応なし。その様子を見て旦那は「うちの嫁と一緒のタイプだ、こういう時はちゃんと服に意見しないといけない」と思ったそうです。

私はそのおじさまもおばさまもちゃんと見てはいないのですが、普段黒ばかり着ているけど思い切ってワインレッドを選んだ、でも自信がないので夫に意見を求めてみた、というおばさまの心理状態がなんとなくわかってしまって、なんとなくとても悲しくなったのでした。おばさまのようになりたくない、というのではなく、同じ心境だからこそ、勇気を持たなきゃいけないよなぁ、ということ。

それは冬の終わりかけの出来事だったのですが、春になってあのおばさまが、春らしい装いになっているといいなぁ、と萬栄の近くを通る度に思い出します。