- 作者: 岸本葉子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/11
- メディア: 文庫
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感銘を受けた部分があったので引用しておきます。
(追記)引用部分の前の部分を書き足しました。そのほうがわかりやすいかと思いましたので。引用の範囲にとどまっている……はず。
が、こうして今、耐えがたいという感情をしばし離れ、全体的な構造を静かな心で眺めてみると、私にとってのほんとうのテーマは、そんなところにはない気がしてくる。
この「今」も、線の上のひとつの点だ。どれほど、自分にとって差し迫った問題を含んでいても、時間上の点とすれば、「今」はやはり相対的なものにすぎない。
父、母、姉、私の人生の線も、やがては離れ離れになる。
家族はひとつだが、人はひとりだ。始点も終点も、ひとりひとり違う。どんなにたくさんの思い出を共有していても、私たちは同じ線を辿り続けることはできない。
父が父の歴史を重ねてきたように、私は私で、自分の人生を生きていかなければならないのだ。
今は家族の関係が、私の中心をなす問題だが、その先はその先で、違う問題があるだろう。
ときどきの問題にあたり、私がどのように考え、何を自分の中に積み重ねていけるか。
それこそが、私にとってほんとうのテーマのはずだ。
本によっては、よく、
「思春期の家族との関係が、私の性格を暗くし、その後の生き方を決定付けた」
みたいなことが書いてある。それはとりもなおさず、思春期以後の精神の営みを、放棄したことに他ならない。人生のどこか一点の「あのとき」を絶対化し、そこから動こうとしないことである。
これまでの私なら、何かを思いついても、
(お金がない)
で終わらせていた。時間と金のある人だけに許されること、自分にはできない、と。
が、少なくとも勤め人としてごくふつうの給料を得ている今、お金が理由には、もうならない。
そしてもうひとつの時間については、誰だってあり余ってなどいるはずがなく、それを理由にしている限りは、いつまでも何もはじめないのと同じだ。
- 作者: 平松洋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/02
- メディア: 単行本
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大学生になって親元を離れて暮らしはじめたとたん、放り出されたのは暗澹の海だ。
(中略)
どれもこれも幼い時分からなじんだ味なのに、ひとりでつくろうと思えば指のあいだをするりと抜け、どこか遠いところへ去ってしまう。こんなはずではなかった。
(いままでの十八年がないことになってしまう)
の部分がもうまるで今の私のようで、続きを読みたくてお買い上げ。私なんぞ30年近く母親の味でごはんを食べてきたというのに、全く同じものが作れず、今でも各種レシピの本を見なければ献立も作れない。ちゃちゃっと何かを作れるまでにあとどれくらいかかるのかまったくもって暗澹の海です。実際の続きは料理にまつわるエッセイなんですが勉強になります。
「活字で読むデザインマガジン クリネタ」(創刊号)ははまぞうで出てこなかったんですが、「編集会議」の別冊だそうです。「読むデザイン誌」と表紙に書いてあって、軽く楽しく読めそうだと思ったら内容が濃くて読み切ってません。