「キッチン」の思い出

唐突によしもとばなな「キッチン」のことを思い出した。読んだことはあるのにあらすじを覚えていない。というのも、大学受験の時に解いた国語か小論文の問題の内容にインパクトがあって、そっちで上書きされてしまったのだ。

手元に本がないので不確かだけど、出だしが「私がこの世で一番好きな場所はキッチンだと思う」という内容の一文で、その問題の説明文中で「自分の心情を説明しているのに『だと思う』という終わり方。本来は『私がこの世で一番好きな場所はキッチンだ』で済む文にわざわざ『だと思う』とつけて自分の心情を曖昧にしている」という内容だった。これに目からうろこがぼろぼろと落ちた。でもその説明文はよしもとばななの文体を非難しているのではなくて、若者の心情の曖昧さを表現する新しい文体だ、と締めくくっていたと思う。

こんなにはっきり内容が頭に残っているのに、これが現代文の設問だったのか小論文の設問だったのか、はたまた本番の入試だったのか過去問なのか模試の問題だったのかをさっぱり覚えていない。10年以上前のことなのにここまで覚えてられるんだから、それくらい覚えてたっていいと思うんだけどな……。とりあえずそれ以来、心情を書く時に「だと思う」と締めくくらないように気をつけるようになった。悪くはないだろうが確かに重なると変。かな。