あまちゃんで描かれた東北地方太平洋沖地震

雑な内容になるかもしれませんが、たぶん今日の勢いじゃないと書けない内容なので書く。

あまちゃん」9月2日(月)放送回で、東日本大震災東北地方太平洋沖地震)が描かれました。2011年3月11日の様子。私はその時は関西にいたので、ドラマ中の東京組のような体験はしていません。

8時からの放送を見終わった後に、こちらのツイートを見て、今日の地震の描き方は約2年半後である今だからこそできるんだな、そこをきちっと狙って作ってあるんだろうな、と思いました。

あまちゃんのメイン視聴者は、程度の差はあれ、東日本大震災を何らかの形で経験しています。揺れがなかった地域でも報道を見れば何が起きているかはわかります。テレビを見ていなくても、ラジオか、紙媒体か、あるいは後から、何らかの形で発生したことは知っているはずです(徹底的に情報が遮断されているとしたらあまちゃんもたぶん見てない)。視聴者の体験や記憶を合わせ技にして、壊れたジオラマ(列車、ひしゃげた線路、細かくカット割りされていた青いガラスがかぶさるところ)で地震津波を表現して、直接の描写はされていません。それでも記憶・体験とつながって、3月11日にどんなことがあったか、ドラマの登場人物に何が起こったのか分かるようになっていたと感じました。

直接の描写にあたる部分は、列車内で被災した大吉さんと、ユイちゃんを含む乗客のところ。笑顔で励ます大吉さんと何が起きたかわからない乗客、切れる無線、子供がお腹をすかせるところで時間の経過がわかり、意を決した大吉さんが列車を降りて歩き出し、運転士さんがヘッドライトを付け、大吉さんはトンネルの外の光に向かってゴーストバスターズを口ずさみながら近づいてゆき、トンネルの外を見て、後から追ってきたユイちゃんに「見るな」と言ったけれどユイちゃんは見てしまい、二人が立ち尽くすのと一緒に瓦礫を見せ、ユイちゃんの顔のアップと泣く大吉さん、トンネルの中から撮った二人の立ち姿のシルエット(思い出しながら書いてますが順番が合ってるか自信ないです。夜あまを見よう……(夜あま後追記:全然シルエットどころじゃなくばっちり映ってました。見えてなかった……))。二人の立ち姿シルエットのところが個人的には堪えました。

何か大きい出来事が起きたときに、その様子を映像で喚起するのは案外大変なことだと思います。1995年1月17日の阪神・淡路大震災兵庫県南部地震)を、何かシンボリックなもの以外で思い出すのは結構難しい。倒壊した阪神高速道路神戸線や、長田区の火災の様子を除くと、地名や地名に起因する建物くらいでしか映像では判別できないかなーという気がします。いわんや関東大震災をや。もちろん時代がはっきり違うので、1923年と1995年と2011年の記録映像そのものは映像の質で見分けられるとは思います。が、今日のあまちゃんではニュース映像は一切使っていませんでした。報道フロアが揺れるところや時計のアップくらいは使うのかな、と思っていたら、本当にドラマの中だけで描写が終わっていた。

20年後に東日本大震災を描いたドラマとしてあまちゃんが再放送されたときに、割れた青いガラスが北三陸市のジオラマの上にかぶさっていく描写で、当時繰り返し放送された津波の様子を思い描ける人は少なくなっていると思います。みんながだいたい見ていた津波の様子をみんながだいたいオーバーラップできるには、たぶんもうあんまり時間がなくて、だからこそ今なら「直接描かない」方法で再現してみせることができたのかなと。